2年間のカロリー制限が老化に及ぼす影響
こんにちは。今回は2023年に発表されたコロンビア大学エイジングセンターのカロリー制限による老化防止についての研究を紹介します。
2009年にウィスコンシン大学が行った研究でも研究においても、アカゲザルにカロリー制限を行うと、自由に食事を与えられたアカゲザルと比べて、疾病リスクが低くなり、生存率が高くなるしたという研究結果が示されました。このことからも、カロリー制限が人類の老化防止にも役立つのではないかという仮説が立てられ、現在も研究が進んでいます。
今回の研究では、20歳から51歳の男女220人を、カロリー制限を行うグループ(145人)と普段通りに自由に食事するグループ(75人)を分けて、実験を行いました。
実験期間は2年となっており、このうちカロリー制限を行ったグループは、一日に必要な必要なカロリーの25%の制限が行われました。カロリーの25%の制限は、男性だと一日の摂取カロリーが約2600kcalなので、約650kcal程度のカロリー制限を行うことになります。約650kaclは、おにぎり3つ分くらいなので、その量を毎日断食するのはかなりきついですよね。
そして、この研究では身体の細胞、テロメアの長さなどをもとに算出される生物学的年齢をもとに老化を調べました。生物学的年齢が、実際の年齢より低いと健康である可能性が高く、逆に実際の年齢よりも高いと老化が進んでおり、病気にかかりやすくなっています。
そして、この研究では近年生物学的年齢を測るのにつかわれている、以下の3つの指標について、被験者を調べて、断食による老化具合を測定しました。
- GrimAge(DNAのメチル化レベルを測る。メチル化レベルとは、遺伝子の転写を阻害して、遺伝子の発現を抑制する役割を果たし、メチル化が進むとがんや神経疾患、精神疾患になりやすくなります。)
- PhenoAge(DNAメチル化レベルを測る。)
- DunedinPACE(一般的な人と比べて、老化の速度を測る。)
その結果として分かったこととしては、
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GrimAgeやPhenoAgeに関しては、カロリー制限をしたグループも、そうでないグループも結果が変わらなかった。
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DunedinPACEは、カロリー制限をしたグループは老化速度が2~3%低下した。老化速度の2~3%減少は、全死亡率が10~15%減少し、喫煙した人が禁煙した時の効果と同様であることが言える。
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20%以上のカロリー制限をしたグループは、10%以上のカロリー制限をしたグループに比べて、DunedinPACEの数値が低かった。また、10%以上のカロリー制限をしたグループは10%未満の人に比べて、DunedinPACEの数値が低かった。このことから、カロリー制限をより多く行うほどDunedinPACEの数値が低く、老化速度が低下していることが分かる。また、20%以上のカロリー制限を行ったグループはおおよそ、平均的なカロリー制限を行ったグループより、1.3倍程度DunedinPACEのスコアが低く、3%~4%の老化速度の減少をしていると考えられる。これは、全死亡率を15%~20%にあたり、これはコーヒー2杯程度を摂取することと同程度の結果となっている。
上記の結果から、カロリー制限を行うと、GrimAgeやPhenoAgeなどのメチル化レベルを測る指標は変わらなかったものの、DuneDinPACEの指標は変化しており、老化速度が遅くなることが分かりました。
この研究では、すべての指標でカロリー制限によって、老化速度が遅くなることが確認することができませんでした。ただ、研究者はGrimAgeやPhenoAgeは、高齢者の単一時点での指標を測っているのに対して、DuneDinPaceは成人~中年のデータをもと指標が算出されており、今回のモデルでは、成人や中年の被験者が多かったため、DuneDinPaceの方が正確性が高いと述べられています。そして、DuneDinPACEでカロリー制限による効果が実証されたため、カロリー制限による老化速度が遅くなる可能性が高いと言えるとのことです。
今回の研究では、被験者に2年間のカロリー制限を行わせて、カロリー制限の効果を調べました。その結果、
- カロリー制限によって、老化スピードが2~3%遅くなることが分かった。
- また、一日20%のカロリー制限(成人男性の場合、約500kcal)をする人は、10%のカロリー制限をする人に比べて、老化スピードが1.3倍程度低下した。
とのことでした。
以上、アンチエイジングの研究を紹介しました。 みなさん、ぜひ健康に気をつけて長く行きましょう!では、また来週にお会いしましょう!