アンチエイジングの基礎と臨床より 運動と認知機能編

こんにちは。豆太郎です。 今回は、運動と認知機能についての記事を書きました。

運動による認知機能の改善について

運動をすることは、脳の全般の機能を総合的に高めることが分かっています。 実は、意外にも脳トレや食品療法などの健康的な取り組みは、脳の一部の機能を高めるものの、総合的な認知機能を改善がされにくいことが分かっています。

  • 脳トレ:課題遂行機能(自分の感情や、意識を制御して課題に取り組むこと)の改善は見られたものの、脳の総合的な機能の改善や記憶力の改善は見られなかった。
  • 食品:DHA、葉酸、ウリジン-1-リン酸などの食品を3年間摂取すると、総合的な認知機能の改善はされたものの、記憶力の改善は見られなかった。

上記のように、一般的な健康療法でも、総合的に脳機能を高めるような療法はなかなか存在せずに、運動は総合的な認知機能を高める万能薬だと言えるでしょう。

とくに、運動は海馬と前頭前野などの脳の萎縮を抑制して、より体積を増やすことが分かっています。 以下に、海馬と前頭前野の働きを書きました。

  • 海馬:数分~数日間の記憶を保持しておくための機能をもっている。そのため、海馬の機能が損傷すると最近勉強したことが分からなくなったり、数分前に行った家事を行ったかどうかが思い出せなくなってしまう。
  • 前頭前野:注意力や判断力を伴う。そのため、前頭前野の機能が損なわれると集中して物事に取り組むことができなくなってしまう。

上記のように、前頭前野は目の前の物事に集中する役割を担っており、海馬は最近起こったことに関して記憶しておく機能を担っています。

ですので、前頭前野や、海馬が損なわれると

  • 料理や運転に集中できなくなる
  • 読書やドラマなどつい最近見た内容を思い出せずに物語の続きを楽しめなくなる

といった日常生活に満足することが難しくなります。

ただし、運動を行うと前頭前野や海馬などの実行機能が高まるとのこと。例えば、以下のような研究結果があります。

  • 一週間の歩行距離が多い高齢者ほど、9年後の調査で海馬や前頭前野が大きくなることが分かった。また、13年後の調査では、歩行距離が大きいほど認知症にかかるリスクが小さかったとのこと。

  • 高齢のラットに、運動をさせると海馬で新しい神経が増え、海馬の面積が大きくなり、空間学習能力も向上することが分かった。

  • また、10分間の中強度の運動を行うと、課題遂行をする部位とは違う脳の部位の神経が増加して、実行機能が向上することが分かった。

  • 一年間の有酸素運動を続けると、脳領域同士の結びつきが強くなることが分かった。

上記の結果から、まず、運動をすることで海馬や前頭前野などの脳の機能が高まることが分かり、そして、運動をすることで脳の全体の機能的な結びつきが増えることが言えます。

また、脳のつながりが増えることで認知予備力を高めることができ、脳の機能を一定に保つことができます。認知予備能力とはある脳領域が損傷しても、他の脳領域がカバーすることであり、運動が脳のつながりを高めることから、認知予備力によって、脳機能を一定に保つことができるとのことです。

認知機能を高めるには、どの程度の運動が最適であるのか?

メタアナリシスの研究結果からは、1セットに45分~60分の中高強度の運動が認知機能の改善と関連することが示されています。 つまり、軽いランニングを45分から60分程度行うことが認知機能の改善につながるとのことです。

ただし、別の研究では、HIITトレーニングといった高強度の短い運動時間でも認知機能を高めることが報告されています。 HIITは、High Intensity Interval Traning の略語で、短時間で全力で動いて、少し休憩して、、、また全力で動いて、、を繰り返す運動となっています。私自身は、HIITの一種であるタバタ式トレーニングを、2日に一回行っていますが、短時間で体を追い込むため、一時的な大きな苦痛を感じながら、トレーニングを行っています。ただし、終わった後は達成感を味わうことができます。

ただ、Hiitやランニングといった中強度の運動を行わなくても、認知機能を高めることができます。 最近の研究では、ウォーキングなどの低強度の運動でも海馬の神経が増え、空間学習能力が上がることが明らかになっています。

茨城県の利根町の参加者を対象に行った実験では、被験者に月に2回~6回の低強度の運動を行う教室に通わせ、 毎日30分間の低強度な運動(簡単な音楽に合わせて運動をする「フリフリグッパー」)を実施したところ、 前頭前野の萎縮が抑制されて、記憶や実行機能課題(読み書き、計算)の成績が向上しました。

このことから、低強度の運動でも認知機能を高めることができるため、 運動に苦手意識がある人はまずは、簡単な運動から試してみても、脳機能の改善に効果があるでしょう。

運動を通して、年をとっても趣味や運転などに日常生活を楽しめるように、若いうちから対策をしておきましょう!

以上、アンチエイジングの研究を紹介しました。 みなさん、ぜひ健康に気をつけて長く行きましょう!では、また来週にお会いしましょう!