長時間労働が主観的健康感に与える影響について
こんにちは。もうそろそろ10月に入り、大学生活が始まります。 新しいことを学んだり、友達と学習内容を共有したりして、充実した生活を送りたいところです。
今回は、どのくらいの労働労働で人は健康になるのかを調べました。
参考にした研究は、大阪大学の経済学研究科の藤井英彦さんが行った研究を紹介します。
この研究では、労働時間と主観的健康感について調査を行いました。
ここで、主観的健康感とは、自らの健康を自分で評価した時の指標のことで、 血圧や体重、脂肪といった客観的に分かる健康状態と比較して、主観的健康観は 個人が日々感じる精神状態や日常での健康具合を調べることができます。
また、主観的健康感が高い人ほど疾病の有無にかかわらず、平均寿命が高く、生存率が高いことが知られています。
つまり、主観的健康感は長生きするために重要な指標ともいえると思います。
この研究では、
これまでに行われてきた仕事と労働時間の関係については以下のことが分かっています。
- 週の労働時間が50時間あたりを超え始めたときから、メンタルヘルスに影響を与える。また、女性では残業時間が長くなるとうつ病や不安症のリスクが高まるが、男性にはその傾向が見られない。 また、男性はサービス残業(賃金が払われない時間外労働)が増えるとメンタルヘルスが悪化するのに対して、女性は残業時間が増えるとメンタルヘルスが悪化する。
- 仕事と余暇のバランスが健康に正の影響を与える。
- 仕事を離れても、仕事から解放されない状況や一度に多くの業務を処理する状況では、健康に負の影響を与える
- 長時間労働は、ストレスの要因であるが職場の助け合いや、仕事や役割の明確化でストレスは軽減する。
上記のように、週50時間を超える長時間労働は健康に負の影響を与えるものの、仕事の役割の明確化や従業員の助け合いによって、長時間労働による負の影響を緩和できることがあることが分かりました。
この研究では、さらに主観的健康感に負の影響を与える労働時間を、仕事の裁量や職場の人間関係などの主観的健康感に影響を与える要因も含めて、調査を行いました。
そこで、研究では2007年から2014年において、20~40代の正社員に対して、主観的健康感や職場の環境を調査するアンケートを行いました。また、この研究では、集めたデータのうち、農業・漁業・林業・公務員などを除き、一般的な企業における従業員560名について調査を行いました。
この調査では以下のような、結果がでました。
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月間労働時間200時間前後までにおいては主観的健康観に与える影響は一定の変化で下がっていた。
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月間労働時間が210時間を超えると、主観的健康感が大幅に低下していた。
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また、男女別では、男性は月間労働時間が長くなると、主観的幸福感に一定の変化で低下するが、女性は200時間から急激に低下していた。
上記のことから、月間労働時間が長くなればなるほど主観的健康感が低下することが分かり、さらに男性は230時間(月残業70時間)、女性は200時間(月残業40時間)で主観的健康感が大幅に下がることが確認できました。
また、以下では仕事のペースの自律性や職場の助け合う雰囲気といった主観的健康感に正の影響を与える要因を含めて、調べました。
- 仕事のペースの自律性は主観的健康感に良い影響を与えが、助け合う雰囲気はそこまで影響はなかった。
- また、男性においては仕事のペースの自律性は女性に比べてより主観的健康感に影響を与えることが分かった。
- 男性は月労働時間が220時間を超えると、仕事のペースの自律性や、助け合う雰囲気が高いと、主観的健康感の悪化を緩和できることが分かった。
- 女性は仕事のペースの自律性や助け合う雰囲気は主観的健康感に影響しないことが分かった。
このことから、男性は「自分で仕事のペースを決めたり、変えたりすることができる」といった仕事の自律性が主観的幸福感に正の影響を与えていることが分かりました。(この研究の良いところとしては、男女での影響の違いを分析しているところだと思いました)
この研究のまとめとしては、
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残業時間が増えるほど、主観的健康感は下がるが、女性は月労働時間が200時間を超えたあたりから急激に主観的健康感が下がる
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男性は、自律性の高い仕事であるほど、主観的健康感が高い。また男性は、220時間を超える長時間労働である場合に、自律性が高く、お互いが助け合う雰囲気の仕事であれば、主観的健康感が悪化しづらくなる。
とのことでした。ということで、言えることとしては、労働時間が長いほど主観的健康感が下がるので、なるべく労働時間が短い職場を選んだり、残業時間を増やさないように心がけようということです。
また、男性の場合は上司に対して、自分で仕事の裁量権やペースを決められるように相談するといったことが重要になってきそうですね。
以上、アンチエイジングの研究を紹介しました。 みなさん、ぜひ健康に気をつけて長く行きましょう!では、また来週にお会いしましょう!